2025/12/25
こんにちは。
姫路はま矯正歯科 院長の濱です。
今回のブログでは、「小児・子どもの受け口(反対咬合)の治療」について詳しくお話しします。
受け口の治療は、「何歳から始めたらいいの?」「早く始めた方がいいの?」「成長したら自然に治るの?」といったご質問を非常によくいただきます。
実は、受け口の治療は年齢や成長段階によって考え方・治療方法が大きく変わる矯正治療です。
そこで今回は、
👉 小児の受け口治療を【3つのステージ】に分けて
それぞれの時期にできること・メリット・デメリットをわかりやすく解説していきます。
目次
小児の受け口(反対咬合)の治療は、大きく以下の3段階に分けて考えると理解しやすくなります。
小学生になる前(乳歯列期)
小学校前期(3〜4年生頃まで)
小学校後期(5〜6年生頃以降)
それぞれの時期で「できること」「効果の出やすさ」「注意点」が異なります。

この時期は、乳歯だけが生えている「乳歯列期」と呼ばれる時期で、
目安としては6歳臼歯(第一大臼歯)が生えてくる前までになります。
「早く治した方がいい」と思われる親御さんも多いのですが、実はこの時期にできる治療内容はそれほど多くありません。
理由としては、
装置をきちんと装着できるかどうか
型取り(印象採得)ができるか
診療台に一定時間座っていられるか
治療への理解・協力が得られるか
といった点が大きなハードルになるからです。
とはいえ、乳歯列期に受け口を改善しておくことには意味があります。
特に、
前歯の反対咬合を解除する
上顎の成長を妨げないようにする
という点では、早めの対応が後の成長に良い影響を与えることがあります。
早期に前歯のかみ合わせを正常に戻すことで、
上顎骨の前方成長を促しやすくなるケースもあります。
この時期の治療は「装置を入れれば治る」というものではありません。
舌の使い方のトレーニング
口唇の筋機能訓練
姿勢の改善
呼吸の仕方の指導
といった機能面の改善が非常に重要になります。
つまり、
👉「入れて終わりの治療」ではなく
👉「生活習慣や癖を一緒に直していく治療」になります。
そのため、保護者の方の協力がとても重要です。
・毎日装置を使えるか
・トレーニングを続けられるか
・通院を継続できるか
こうした点が治療結果に大きく影響します。
また、効果がすぐに出る治療ではありません。
長い目で見て取り組む姿勢が必要になります。
次に、小学校前期(だいたい3〜4年生頃)です。
この時期になると、
6歳臼歯(第一大臼歯)が生えている
上下の前歯が生え替わり始める
型取りができる
装置を比較的きちんと使える
といった条件が整ってきます。
そのため、治療の選択肢が一気に広がる時期です。
骨格的に上顎が小さい、または下顎が前に出ているタイプの場合には、
を使用することが多くなります。
フェイスマスクは、
上顎骨を前方へ成長誘導する
咬合平面を変化させる
下顎の成長方向をコントロールする
といった目的で使われます。
夜間の装着に加えて、可能であれば日中も数時間使用できると、より高い効果が期待できます。
この時期は上顎の成長をコントロールしやすい貴重な時期であり、受け口治療としては非常に重要なタイミングです。
一方で、
前歯の傾きが原因
一部の歯だけが反対になっている
機能的なズレが原因
といったケースでは、骨格そのものではなく歯並びの問題であることもあります。
その場合には、
部分的なマルチブラケット装置
リンガルアーチ
その他固定式装置
などを用いて、比較的短期間で改善できるケースもあります。
骨格性の治療は年単位で時間がかかることが多いですが、
歯列性・機能性の場合は、比較的短期間で終了することも少なくありません。
小学校高学年になると、上顎の成長は次第に終盤に近づいてきます。
この時期になると、
上顎骨の成長誘導は効果が出にくくなる
下顎の成長が目立ってくる
という特徴があります。
そのため、前期に比べると治療の難易度はやや上がる傾向にあります。
この時期に「下顎の成長を抑えるためにチンキャップを使う」という方法がありますが、
実際には
・一時的に改善しても
・外すとリバウンドが起こりやすい
という報告が多く、長期的な安定は得にくいのが現状です。
そのため、下顎の成長抑制だけに頼る治療は慎重に考える必要があります。
後期でも、残っている成長を利用してフェイスマスクを使うことはあります。ただし、効果は前期より限定的になります。
受け口の治療で非常に大切なのは、
成長が完全に終わるまで経過をみることです。
下顎の成長は、人によっては高校生後半まで続くこともあります。
そのため、
一期治療で一旦良くなった
しかし成長とともに再び受け口が強くなった
というケースも少なくありません。
その場合は、
非抜歯でマルチブラケット治療
抜歯を行い、カモフラージュ矯正
顎変形症として外科手術(外科矯正)
どの方法が適しているかは、骨格の状態や成長量によって判断します。
受け口治療は、
長期間にわたる
段階的に治療方針が変わる
成長によって結果が左右される
という特徴があります。
そのため重要なのは、
「次がダメだったらどうするのか」
「その次はどんな選択肢があるのか」
を最初のカウンセリングでしっかり説明してくれる矯正歯科を選ぶことです。
「うちはこの装置しかやっていません」
「この治療しかできません」
という医院では、その後の選択肢が狭くなってしまうこともあります。

これは医院によって大きく異なります。
一期治療と二期治療が完全別料金
総額から一期治療分を差し引く方式
継続治療として割引される方式
など、さまざまです。
必ず事前に
「一期治療後、二期治療になった場合はいくらかかりますか?」
と確認されることをおすすめします。
治療期間は、
骨格性か
歯列性か
成長の状態
によって大きく異なります。
レントゲン撮影や精密検査を行わないと正確な期間は判断できません。
精密検査後に
「予想される治療期間」をしっかり説明してもらうことが大切です。
装置を入れた直後などに、痛み止めが必要になることはありますが、強い痛みが長く続くことは多くありません。
途中で治療を中断すると、
十分な効果が得られない
後戻りが起こる
次の治療方針を立て直す必要がある
といった問題が起こります。
そのため、
「もし途中で続けられなくなったらどうするか」
「再開する場合はどうなるか」
を事前に相談しておくことがとても大切です。
小児の受け口治療は、
短期間で終わる治療ではない
成長を見ながら段階的に進める治療
将来を見据えた治療計画が重要
という特徴があります。
まずはしっかりと精密検査を受け、
骨格にどんな問題があるのか
歯並びの問題なのか
将来どういう治療の可能性があるのか
を明確にしたうえで、治療をスタートされることをおすすめします。
お子さんの将来の噛み合わせや顔貌、健康に関わる大切な治療です。
納得できる説明と長期的な視点を持った歯科医院で相談されることが、何より大切だと思います。

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