2026/04/02
こんにちは。姫路はま矯正歯科の濱です。
今回は「矯正治療に伴うリスク」シリーズの第2回として、歯科矯正において重要なテーマである歯根吸収について詳しく解説していきます。
矯正治療は、歯並びや咬み合わせを改善し、見た目だけでなく機能面の向上にも大きく寄与する治療です。しかしその一方で、歯を動かすという生体反応を利用する以上、いくつかの副反応が生じる可能性があります。
その中でも歯根吸収は比較的頻度が高く、事前にしっかり理解しておくべき重要なリスクの一つです。
目次
歯根吸収とは、歯の根の部分(歯根)が矯正治療中に徐々に短くなってしまう現象を指します。
通常、歯は歯槽骨の中にしっかりと固定されていますが、矯正治療では歯に持続的な力を加えることで、骨の吸収と再生(リモデリング)を繰り返しながら歯を移動させていきます。
この過程で、本来は骨に起こるはずの吸収作用が歯根の表面にも及ぶことで、歯根がわずかに削られるように吸収されてしまうのです。
多くの場合は軽度であり、見た目や機能に影響しないレベルで収まることがほとんどですが、稀に進行するケースもあるため注意が必要です。

矯正治療中、歯に力が加わると歯根膜に圧迫側と牽引側が生じます。
このバランスによって歯は移動しますが、圧迫が強すぎたり長期間持続すると、歯根膜の壊死(ヒアリン変性)が起こり、その修復過程で歯根表面にも吸収が及ぶことがあります。
つまり歯根吸収は、過度な生体反応の結果として起こる現象とも言えます。
文献によって差はありますが、軽度の歯根吸収は約10〜20%以上の患者さんに認められると報告されています。
さらに細かく見ると、
とされており、多くは臨床的に問題とならない範囲に収まります。
歯根吸収は単一の原因ではなく、複数の要因が重なって発生します。
歯根吸収は自覚症状がほとんどないため、定期的なレントゲン評価が非常に重要です。
臨床的には以下のような変化に注意します。
早期に発見できれば、治療方針の修正により進行を抑えることが可能です。

歯根吸収は完全に防ぐことはできませんが、以下のような工夫でリスクを大きく下げることができます。
CTやセファロ分析などを用いて、骨格や歯根形態を詳細に評価し、リスクの高い症例を事前に把握します。
「弱く・持続的な力」で歯を動かすことが基本です。過度な力は百害あって一利なしです。
必要に応じて**一時的に矯正力を除去する“休止期間”**を設けることで、歯根の回復を促すことがあります。
無駄な動きを避け、一方向の計画的な移動を行うことでジグリングを防ぎます。
バイトプレートや咬合調整により、過度な咬合力をコントロールします。
歯根吸収が確認された場合、まず重要なのは進行の程度を評価することです。
患者さんが最も不安に感じる点として、「歯根が短くなると歯が長持ちしないのでは?」という疑問があります。
結論から言うと、軽度の歯根吸収であれば歯の寿命に大きな影響はありません。
しかし、
これらが重なると、歯の予後に影響する可能性があります。
したがって、矯正治療後も含めた長期的な管理が非常に重要です。
歯根吸収に限らず、矯正治療にはいくつかのリスクが伴います。
そのため重要なのは、
そして患者さんがそれを理解・納得した上で治療を受けること、いわゆるインフォームドコンセントが不可欠です。
歯根吸収は、矯正治療において一定の確率で起こる生体反応の一つです。
しかし、
これらを徹底することで、そのリスクは十分にコントロール可能です。
大切なのは、「リスクがあるから怖い」ではなく、「リスクを理解し、適切に管理する」という考え方です。
患者さんと歯科医師がしっかりと情報を共有し、信頼関係のもとで治療を進めていくことが、良好な結果につながると考えています。

次回も引き続き、矯正治療に伴うリスクについて分かりやすく解説していきます。ぜひご覧ください。
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