医院ブログ

2026/05/07

顎変形症の治療は保険適用?手術が必要になる症状と治療の流れを詳しく解説

皆さんこんにちは。姫路はま矯正歯科の院長の濱です。

ここ最近のブログでは「矯正治療に伴うリスク」についてお話してきましたが、今回は少しテーマを変えて、「顎変形症(がくへんけいしょう)」について詳しくお話したいと思います。

ちょうど本日、5月7日付の神戸新聞に、顎変形症手術を受けた患者さんの記事が掲載されていました。記事の中では、長年コンプレックスを抱えていた患者さんが、手術によって前向きになれたという内容が紹介されていました。

実際、顎変形症は単なる「見た目」の問題として語られることもありますが、私たち矯正歯科医の立場からすると、見た目以上に「噛む」「話す」「顎を動かす」といった機能面に大きな影響を与える疾患です。

また、一般的な矯正治療とは異なり、外科手術を伴うことが多く、さらに健康保険が適用される特殊な矯正治療でもあります。そのため、どこの歯科医院でも治療できるわけではありません。

今回は、

  • 顎変形症とは何か
  • どのような症状が出るのか
  • なぜ手術が必要になるのか
  • 保険適用になる条件
  • 治療の流れ
  • 治療期間や費用
  • 治療を受ける際の注意点

について、できるだけ分かりやすく詳しく解説していきます。


顎変形症とは?

顎変形症とは、上顎や下顎の大きさ・位置・形態の異常によって、噛み合わせや顔貌に問題が生じている状態を指します。

簡単に言えば、

  • 下顎が前に出ている
  • 上顎が前に出ている
  • 顔が左右に曲がっている
  • 噛み合わせが合わない
  • 前歯で噛めない

などの状態です。

代表的なものとしては、

  • 受け口(下顎前突)
  • 出っ歯(上顎前突)
  • 開咬(前歯が噛み合わない)
  • 顔面非対称
  • 上下顎前突

などがあります。

特に重度の場合には、歯だけを動かす通常の矯正治療では改善が難しく、顎の骨そのものを手術で移動させる必要があります。


見た目だけの問題ではありません

顎変形症というと、「美容目的」「見た目を整えるため」と思われる方も少なくありません。

しかし実際には、機能的な問題を伴うことが非常に多いです。

例えば、

① 食べ物が噛みにくい

上下の歯がうまく噛み合わないため、

  • 麺類が噛み切れない
  • 前歯で食べ物を噛めない
  • 奥歯だけで噛んでいる

ということが起こります。

食事に時間がかかる方も多いです。


② 顎関節症を伴うことがある

噛み合わせのバランスが悪いため、

  • 顎が痛い
  • 音が鳴る
  • 口が開けづらい

などの症状が出ることがあります。

もちろん顎関節症の原因は一つではありませんが、顎変形症が関与しているケースも少なくありません。


③ 発音しづらい

特に開咬の患者さんでは、

  • サ行
  • タ行

などの発音が不明瞭になることがあります。

接客業や営業職など、人前で話す機会が多い方では深刻な悩みになることもあります。


④ 精神的なコンプレックス

顎の突出感や顔の左右差に悩み、

  • 人前で笑えない
  • 写真が苦手
  • マスクを外したくない

という患者さんもおられます。

特に思春期以降になると、精神的ストレスにつながることもあります。

神戸新聞の記事でも、「手術後に前向きになれた」という内容が紹介されていましたが、実際に外科矯正治療後に表情が明るくなる患者さんは非常に多いです。


顎変形症の原因とは?

原因については、まだ完全には解明されていません。

一般的には、

  • 遺伝的要因
  • 成長発育の異常

が強く関係していると言われています。

例えば、

  • ご家族に受け口の方がいる
  • 顔貌が似ている

というケースはよくあります。

一方で、

  • 指しゃぶり
  • 舌を前に出す癖
  • 口呼吸

などの習癖が関与する可能性も指摘されています。

ただし、それだけが原因というわけではありません。


顎変形症は保険適用になる?

ここが非常に重要なポイントです。

通常の矯正治療は自由診療、つまり自費診療です。

しかし顎変形症については、一定条件を満たすことで健康保険が適用されます。

これは、

「見た目を整えるための治療」

ではなく、

「咀嚼機能や顎口腔機能を改善するための治療」

と考えられているためです。


どこでも保険治療ができるわけではありません

ここを誤解されている方も非常に多いです。

保険適用で顎変形症治療を行うためには、

  • 顎口腔機能診断施設
  • 指定自立支援医療機関

など、厚生労働省が定めた施設基準を満たしている必要があります。

つまり、

「矯正歯科ならどこでも保険治療できる」

わけではありません。

また、外科手術を行う病院との連携体制も必要です。

そのため、

  • 矯正歯科
  • 口腔外科
  • 麻酔科
  • 入院施設

などがしっかり連携して治療を進める必要があります。


顎変形症の診断方法

診断には通常の矯正検査に加えて、より詳細な検査が必要になります。

例えば、

  • 側面セファログラム
  • 正面セファログラム
  • CT検査
  • 顎運動検査
  • 顔貌分析
  • 咬合分析

などです。

特にセファログラム分析では、骨格的なズレを数値化して診断します。

単に「歯並びが悪い」だけなのか、
「骨格に問題がある」のかを見極めることが非常に重要です。


実際の治療の流れ

① 術前矯正

まずは矯正装置をつけて、歯を適切な位置へ並べていきます。

患者さんによっては、

  • 抜歯
  • アンカースクリュー

などを使用する場合もあります。

この段階では、一時的に噛み合わせが悪くなることがあります。

患者さんからすると、

「前より噛みにくくなった」

と感じることもありますが、これは手術後に正しい噛み合わせを作るために必要な準備です。

期間の目安は約1〜2年半程度です。


② 顎矯正手術

入院して全身麻酔下で手術を行います。

代表的な手術としては、

  • 下顎枝矢状分割術
  • Le Fort I型骨切り術

などがあります。

最近では口腔内から手術を行うことが多く、外側に大きな傷が残るケースは少なくなっています。

入院期間は病院によって異なりますが、一般的には1週間前後です。


手術後はどうなる?

手術直後は、

  • 腫れ
  • 痛み
  • しびれ

などが出ることがあります。

特に下顎の手術後には、下唇周囲の感覚異常が一時的に出ることがあります。

ほとんどは徐々に改善しますが、回復には時間がかかることがあります。

食事についても、しばらくは柔らかいもの中心になります。

ただ、多くの患者さんが、

  • 「噛みやすくなった」
  • 「顔のバランスが改善した」
  • 「横顔に自信が持てた」

と話されます。


③ 術後矯正

手術後も細かい噛み合わせの調整を行います。

期間は約1年前後です。

この段階で、より安定した咬合へ仕上げていきます。


④ 保定期間

矯正治療終了後には、後戻りを防ぐために保定装置を使用します。

一般的には2年前後の保定期間が必要です。


治療期間はかなり長い

顎変形症治療は、

  • 術前矯正
  • 手術
  • 術後矯正
  • 保定

まで含めると、数年単位の治療になります。

そのため、

  • 通院を継続できるか
  • ライフイベントとの兼ね合い
  • 受験や就職時期

なども考慮しながら治療計画を立てる必要があります。


費用について

保険適用の場合、自己負担割合によって費用は変わります。

また、

  • 育成医療
  • 更生医療
  • 高額療養費制度

などが適用される場合もあります。

そのため、実際の負担額は患者さんごとに異なります。

ただし、自由診療で外科矯正を行う場合と比較すると、保険適用のメリットは非常に大きいです。


治療を受ける際に大切なこと

顎変形症治療では、

  • 正確な診断
  • 外科との連携
  • 長期的な管理

が非常に重要です。

また、健康保険治療では治療手順にも一定のルールがあります。

そのため、

「できるだけ短期間で」
「見た目だけ改善したい」

という考えだけでは難しい場合もあります。

まずは、認可を受けた施設でしっかり相談し、自分に合った治療法を確認することが大切です。


まとめ

今回のお話をまとめると、

  • 顎変形症は見た目だけでなく機能的問題を伴う疾患
  • 重度の場合は外科手術が必要
  • 健康保険が適用されるケースがある
  • ただし認可施設でのみ治療可能
  • 治療には数年単位の期間が必要
  • 矯正歯科と口腔外科の連携が重要

ということになります。

顎変形症で悩まれている方の中には、

「自分は美容目的だと思われるのでは」

と不安に感じている方もおられます。

しかし実際には、噛み合わせや顎機能に大きな問題を抱えているケースも少なくありません。

気になる症状がある場合は、一度専門的な検査を受けてみることをおすすめします。

今回のブログは以上です。

また次回のブログもよろしくお願いいたします。

関連記事