医院ブログ

2026/03/20

026年歯科医師国家試験はなぜ難化?合格率低下と歯科医師不足の真実

んにちは。姫路はま矯正歯科院長の濱です。

今回は少し緊急性のあるテーマとして、2026年3月16日に発表された第119回歯科医師国家試験の結果について、矯正歯科医の立場から感じたことをブログとしてまとめていきたいと思います。


■ 第119回歯科医師国家試験の概要

まずは今回の試験結果を整理してみましょう。

  • 出願者数:3219人

  • 受験者数:2837人

  • 合格者数:1757人

  • 合格率:61.9%

この数字だけを見ると、単なる統計に見えるかもしれませんが、実際にはいくつか重要なポイントが含まれています。

まず注目すべきは、「出願者数と受験者数の差」です。約400人が出願したにもかかわらず受験に至っていないという事実があります。これはつまり、卒業できなかった、もしくは受験資格を得られなかった学生が一定数存在することを意味します。

さらに、2837人が受験し、そのうち1757人が合格ということは、約1100人が不合格となっています。


■ 合格率61.9%は過去2番目の低さ

今回の合格率61.9%という数字は、実は過去2番目に低い水準です。

前年(第118回)の合格者数は2136人でしたが、今回は1757人と約400人減少しています。

私が国家試験に合格した第100回の頃は、合格者数は2500〜2600人程度だったと記憶しています。それと比較すると、この20年で500人以上も減少していることになります。

ここから読み取れるのは明確で、国として歯科医師数を意図的に絞っているという流れです。


■ 歯科医師数抑制政策のメリット

この政策には、当然ながらメリットも存在します。

① 歯科医師の質の向上

合格者数を絞ることで、より高い学力・知識を持つ人材のみが歯科医師になる構造が生まれます。
結果として、歯科医療全体の質の底上げが期待されます。

② 学生の学習意欲向上

国家試験が難化し、合格枠が狭くなることで、学生は早い段階から試験を意識した勉強を行うようになります。
6年間を通して高い緊張感を持ち続けることで、学習習慣や基礎力の強化につながります。


■ 一方で見えてくる深刻なデメリット

しかし、この流れには無視できない問題もあります。

① 歯科医師の高齢化

現在の歯科医師の年齢構成を見ると、

  • 60代:約23%

  • 50代:約22%

つまり、**50歳以上が全体の約45%**を占めています。

これはかなりの高齢化です。今後10〜20年で多くの歯科医師が引退することを考えると、急激な人材不足に陥る可能性があります。


② 将来的な歯科医師不足

かつては「歯科医師過剰」と言われていた時代もありましたが、現在はその反動で新規参入が減少しています。

このままいくと、

  • 地域による医療格差の拡大

  • 予約の取りにくさ

  • 一人あたりの診療負担増加

といった問題が現実化してくるでしょう。


③ 保険診療への影響

歯科医師数が減ることで、将来的には保険診療の維持にも影響が出る可能性があります。

人手が不足すると、効率や採算性が重視されるようになり、

  • 自費診療の比重増加

  • 保険適用範囲の縮小

といった方向に進む可能性も否定できません。

これは患者さんにとっても大きな影響を与える問題です。


■ 大学別合格率の格差も拡大

今回の試験で特に印象的だったのは、大学ごとの合格率の差です。

例えば、

  • 東京歯科大学:約94%

  • 岡山大学(国立):約92%

といった高い合格率を維持している大学がある一方で、大学によっては大きく下回る結果となっています。


■ 日本大学歯学部の現状について

私の母校である日本大学歯学部についても触れておきたいと思います。

2026年の結果は以下の通りです。

新卒

  • 出願者:121人

  • 受験者:102人

  • 合格者:59人

  • 合格率:約57%

既卒

  • 受験者:64人

  • 合格者:18人

  • 合格率:約28%

総合合格率

  • 約46.4%

正直に言って、かなり厳しい結果です。

かつては90%以上の合格率を誇っていた時代もありましたが、現在は大きく低下しています。


■ 合格率低下がもたらす負のスパイラル

大学の合格率が低下すると、次のような問題が起こります。

  1. 受験生が志望校として避ける

  2. 優秀な学生が集まりにくくなる

  3. 国家試験合格率がさらに低下する

このように、負のスパイラルに陥る可能性があります。


■ 今後に求められる大学の戦略

日本大学に限らず、多くの私立歯科大学にとって重要なのは、

  • 国家試験対策の強化

  • 教育体制の見直し

  • 進級・卒業基準の適正化

といった「戦略的な改革」です。

特に、「卒業させる=合格させる」という責任のあり方が問われている時代だと思います。


■ 卒業生としての期待

私自身、日本大学歯学部は素晴らしい大学だと思っています。

  • 熱心な教育者

  • 長い歴史

  • 都心(御茶ノ水)という立地

これだけの強みがあるにもかかわらず、現状の結果は非常にもったいないと感じています。

すぐに結果が出るものではありませんが、中長期的な視点での改革と方針転換を強く期待しています。


■ まとめ

今回の第119回歯科医師国家試験の結果から見えてきたのは、

  • 合格率の低下

  • 合格者数の減少

  • 歯科医師の高齢化

  • 将来的な人材不足

といった、日本の歯科医療を取り巻く大きな変化です。

政策としての意図は理解できるものの、
このままでは医療提供体制そのものに影響が出る可能性もあります。

私たち臨床家としても、この流れを正しく理解し、
これからの歯科医療の在り方について考えていく必要があると感じています。


■ 国家試験難化の背景にあるもの

ここで少し視点を広げて、「なぜここまで国家試験が難化しているのか」という背景についても触れておきたいと思います。

大きな流れとしては、過去に問題となった「歯科医師過剰」という議論がベースにあります。コンビニより多いと言われた歯科医院数、都市部への偏在、過当競争による経営の不安定化など、さまざまな問題が指摘されてきました。

その是正策として、

  • 入学定員の抑制

  • 国家試験の難化

  • 合格基準の厳格化

といった政策が段階的に進められてきたわけです。

ただし、この調整は非常に難しく、「減らしすぎると今度は不足する」というバランスの問題を常に孕んでいます。現在はまさに、その転換点に差し掛かっている印象を受けます。


■ 現場レベルで起きている変化

実際の臨床現場でも、少しずつ変化は出始めています。

例えば、

  • 若手勤務医の採用難

  • 地方での後継者不足

  • 診療時間の維持が困難な医院の増加

といった声は、ここ数年で確実に増えてきています。

特に地方では、医院の閉院が地域医療に直結するケースもあり、「歯科医師がいない地域」が今後現実になる可能性もあります。

また、都市部においても、勤務医の確保が難しくなることで、院長一人にかかる負担が増え、結果として診療の質や患者対応に影響が出る懸念もあります。


■ 若手歯科医師にとっての時代

一方で、これから歯科医師になる若い世代にとっては、この状況は一概にネガティブなものではありません。

むしろ、

  • 需要に対して供給が減る

  • 専門性の高い歯科医師の価値が上がる

  • 技術・知識を磨けば活躍の場が広がる

という意味では、「実力が正当に評価される時代」に近づいているとも言えます。

特に矯正歯科やインプラント、予防歯科といった分野では、専門性の差がそのまま患者さんからの信頼につながる時代です。

国家試験の難化は大変ではありますが、それを乗り越えた歯科医師には、それだけの価値が求められるようになってきていると感じます。


■ 患者さんにとっての影響

この流れは、当然ながら患者さんにも影響を与えます。

将来的には、

  • 予約が取りづらくなる

  • 診療までの待ち時間が長くなる

  • 医院ごとの技術差が広がる

といったことが起こる可能性があります。

そのため患者さん自身も、

「どこで治療を受けるか」
「どの分野に強い歯科医師なのか」

といった視点を持つことが、これまで以上に重要になってくるでしょう。


■ 矯正歯科としての今後の役割

最後に、矯正歯科医としての立場から少しお話しさせていただきます。

矯正治療は、

  • 長期的な治療計画

  • 精密な診断

  • 継続的なフォロー

が必要となる分野です。

そのため、歯科医師数の減少や若手不足の影響を比較的受けやすい分野でもあります。

一方で、しっかりとした教育と経験を積んだ矯正歯科医の価値は、今後さらに高まっていくと考えられます。

患者さんにとって安心して長期治療を任せられる存在であるために、我々も日々研鑽を積み続ける必要があります。


■ おわりに(追記)

今回の国家試験の結果は、単なる「合格率の低下」という話ではなく、日本の歯科医療の将来像を考える上で非常に重要な示唆を含んでいます。

  • 人材の質を高めるのか

  • 医療提供体制を維持するのか

この両立は簡単ではありません。

だからこそ、教育機関・行政・現場の歯科医師、それぞれが現状を正しく理解し、次の一手を考えていく必要があると強く感じています。

今後もこうした動向については、臨床家の視点から分かりやすく発信していきたいと思います。

今後はまた通常通り、矯正治療に関する内容を中心にブログを更新していきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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