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2025/11/02

裏側矯正(リンガルブラケット)のメリットとデメリット

こんにちは。姫路はま矯正歯科院長の濱です。
前回は「表側矯正(ラビアルブラケット)」についてお話ししましたが、今回はその続編として「裏側矯正」について詳しく解説していきます。
裏側矯正は「リンガルブラケット」「舌側矯正」「見えない矯正」などとも呼ばれ、歯の裏側に装置を取り付けて行う治療方法です。上顎の場合は舌側というより「口蓋側(こうがいそく)」に装置が付くこともあります。
見た目の印象や仕事の都合で「できるだけ装置を目立たせたくない」という方には、とても人気のある治療法です。


■ 裏側矯正とは?

裏側矯正とは、歯の裏側(舌側)にブラケットとワイヤーを装着し、歯を動かして整えていく治療法です。
一般的な表側矯正と同じようにワイヤー矯正の一種ではありますが、ブラケットの位置がまったく異なるため、装置の設計や調整方法、治療の進め方には多くの違いがあります。


■ 裏側矯正のメリット

① 目立たないこと

最大のメリットはやはり「見えにくい」ことです。
歯の裏側に装置があるため、口を開けてもほとんど気づかれません。
職業柄、人と話す機会が多い方や、営業・接客・芸能関係のお仕事をされている方にとっては、大きな魅力といえるでしょう。

② 唾液による自浄作用が働きやすい

装置が舌側にあることで唾液がよく流れ、自然と食べかすが洗い流される「自浄作用」が働きやすくなります。
もちろん歯みがきを怠れば虫歯になる可能性はありますが、しっかりブラッシングができている方にとっては、表側矯正よりも虫歯のリスクを抑えやすいという面もあります。

③ セットアップモデルによる精密な治療

裏側矯正を行う際には、事前に「セットアップ」と呼ばれる工程を行います。
これは、歯型を採ったりスキャニングしたデータをもとに、理想的な歯並びをシミュレーションして模型を作り、その模型上でブラケットを配置していく方法です。
セットアップを行うことで、治療後の歯並びを具体的にイメージでき、ブラケットの位置づけもより正確になります。
この方法を「インダイレクトボンディング」といい、精密で再現性の高い治療が可能になります。

④ 治療計画が立てやすく、結果を可視化できる

セットアップによって治療後の歯列を事前に確認できるため、患者さん自身も完成形をイメージしやすくなります。
治療の流れを共有しやすく、矯正後の姿をモチベーションにして頑張れるという方も多いです。


■ 裏側矯正のデメリット

どんな治療にもメリットがあればデメリットもあります。
裏側矯正の場合、次のような点が挙げられます。

① 舌への違和感・発音のしづらさ

最も多いのが「舌に当たる違和感」です。
特に初期のうちは、装置が常に舌に触れるため、「しゃ」「し」「つ」などの発音がしづらいと感じることがあります。
慣れるまでに1〜2週間ほどかかる方が多いですが、舌の動きが適応してくると徐々に話しやすくなります。

② 歯ブラシが難しい

歯の裏側に装置がついているため、鏡を見ても汚れが確認しにくく、ブラッシングの難易度が上がります。
専用の歯ブラシやデンタルミラーを活用し、丁寧にケアすることが必要です。
当院でも患者さんに合わせたブラッシング指導を行っています。

③ ボーイングエフェクトが起きやすい

裏側矯正では、力のかかる方向が表側とは逆になります。
そのため、歯列全体が内側に引き込まれる「ボーイングエフェクト」と呼ばれる現象が起きやすくなります。
特に前歯が内側に倒れやすく、奥歯が浮き上がるような力がかかるため、細かな力のコントロールが求められます。

④ 治療期間が長くなりやすい

表側矯正に比べて、力の加え方が繊細であるため、治療期間がやや長くなる傾向があります。
ワイヤーを強く締めすぎると不適切な歯の動きが起きてしまうため、微調整を繰り返しながら慎重に進めていく必要があります。

⑤ 医師の技術力が大きく左右する

裏側矯正は、ブラケットの位置決め、ワイヤーベンディング、力の方向(ベクトル)の設計など、非常に高い精度が求められる治療です。
経験豊富なドクターでないと、治療の進行がスムーズにいかず、結果にも差が出てしまいます。
特に仕上げの段階(ディテーリング)では、細かい歯の角度や高さをワイヤーで調整するため、熟練した技術が必要です。


■ 向いているケース・向いていないケース

裏側矯正は万能ではなく、向き・不向きがあります。
例えば、**過蓋咬合(ディープバイト)**と呼ばれるように、噛み合わせが深いケースでは、上の裏側に装置を付けるスペースが狭く、装置が当たってしまうことがあります。
また、スペースを閉じにくいケースや、歯のねじれが強いケースでは、仕上げの調整に時間がかかる場合もあります。

そのため、事前の診断で「裏側矯正が適しているかどうか」をしっかり見極めることが重要です。
装置の選択は、見た目だけでなく、噛み合わせや歯列の状態を踏まえて判断する必要があります。


■ まとめ

裏側矯正は、見た目に配慮した優れた治療法であり、適切に行えば表側矯正と同等の美しい仕上がりを実現できます。
ただし、治療技術や症例の選択、そして患者さん自身のケアへの意識が非常に大切になります。

「仕事で装置を見せたくない」「できるだけ目立たずに矯正したい」という方には、ぜひ一度ご相談いただきたい治療法です。
当院では、表側矯正・裏側矯正・マウスピース矯正(インビザライン)など、それぞれの特徴を丁寧にご説明し、患者さん一人ひとりに最適な治療プランをご提案しています。

次回は、また別の矯正方法のメリット・デメリットについてお話しします。
どうぞお楽しみに。

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