2025/09/04
こんにちは。姫路浜矯正歯科です。
本日のブログでは、矯正治療を考える上で多くの方が疑問に感じられる「抜歯矯正」と「非抜歯矯正」の違いについて解説してみたいと思います。
歯並びを整える矯正治療には、必ず「歯を抜く必要があるのか、それとも抜かずに治せるのか」という判断がつきまといます。患者さんからも「できれば抜きたくない」「抜かないで治すとどうなるの?」というご質問をよくいただきます。
矯正治療は、患者さん一人ひとりのお口の状態によって方法が異なります。今回はシリーズの第一回として、矯正治療で最もよく行われる 小臼歯の抜歯 について、そして抜歯を行わない場合の違いについて詳しくお話しします。
小臼歯は、犬歯と大臼歯の間にある歯で、上下左右に2本ずつ、合計8本あります。形は小さな臼のようで、食べ物を噛み砕く役割を担っています。矯正治療では、この小臼歯を抜歯してスペースを作ることが多いのですが、それには明確な理由があります。
歯の数に対して顎の大きさが小さいと、歯がきれいに並びきらず、ガタガタに生えてしまいます。これを「叢生(そうせい)」といいます。
イメージとしては、4人掛けのソファに6人座ろうとしている状態です。このままではぎゅうぎゅう詰めで、誰も快適に座れませんよね。そこで2人分のスペースを作るために抜歯を行い、残りの4人がきれいに並べるようにするのです。
「横顔の口元が気になる」という理由で矯正を希望される方は多くいらっしゃいます。抜歯をしてスペースを作ることで、前歯を後方に移動させることができます。結果として、唇の突出感が改善され、横顔のバランスが整いやすくなります。特に上顎前歯を大きく下げたい場合には、抜歯が有効な手段となります。
顎の骨の大きさや位置に差がある場合、抜歯を行わないと歯だけでその差を調整することが難しくなります。例えば、上顎が前に出ている場合には上の前歯を後ろに下げたい、逆に下顎が前に出ている場合には下の前歯を後ろに下げたい、というケースです。抜歯によって得られるスペースを利用して前歯を後退させることで、骨格的なアンバランスをある程度カモフラージュすることが可能になります。
一方で、「できるだけ歯は抜きたくない」と希望される方も多くいらっしゃいます。もちろん非抜歯で治療が可能な場合もありますし、非抜歯のメリットも存在します。
しかし、無理に抜歯を避けた場合には次のようなデメリットが考えられます。
口元がかえって前に出てしまう
歯を並べるスペースが足りないまま矯正すると、歯が前方に傾き、結果的に口元が突出して見えることがあります。
歯槽骨の限界を超えるリスク
歯は歯槽骨という骨の中に支えられています。無理に歯を並べると、歯根の一部が骨から飛び出し、歯茎が下がったり歯の動揺が起こる危険があります。最悪の場合、歯の神経が失活することもあります。
後戻りが起きやすい
骨の中に収まりきらない形で無理に並べた歯は、治療後に元の位置へ戻ろうとする力が強く働きます。そのため、後戻りしやすいというリスクが高くなります。
このように、非抜歯矯正は魅力的ではありますが、適応できるかどうかは歯や骨の状態によって大きく変わります。
では、どのようにして「抜歯」か「非抜歯」かを決めるのでしょうか。
それは、患者さんのご希望を伺いながら、精密検査のデータを基に総合的に判断します。歯列のスペース量、骨格のバランス、口元の審美性、歯の健康状態などをすべて考慮し、メリットとデメリットを比較検討します。
矯正治療は単に「歯並びをきれいにする」だけではなく、横顔の印象やかみ合わせの機能、治療後の安定性など、さまざまな要素を同時に満たす必要があります。そのため、「抜歯か非抜歯か」は一人ひとり異なる最適解が存在します。
抜歯矯正と非抜歯矯正には、それぞれメリット・デメリットがあり、どちらが「正解」というものではありません。大切なのは、患者さんご自身の希望と、医学的に可能な範囲をすり合わせて、一番バランスの良い治療法を見つけることです。
当院では、十分な検査とカウンセリングを行い、患者さんにとって最適な治療法をご提案しています。
次回のブログでは「親知らずの抜歯」について詳しくお話しする予定です。矯正治療を検討されている方にとっても参考になる内容ですので、ぜひご覧ください。
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