医院ブログ

2025/09/11

親知らずの抜歯について

こんにちは。姫路浜矯正歯科院長の濱です。今回は前回に引き続き、「矯正治療で歯を抜くとき」についてのお話です。2回目のテーマは「親知らずの抜歯」です。


親知らずとは?

「親知らず」という名前はよく耳にすると思います。正式には第三大臼歯と呼ばれ、前から数えて8番目の歯にあたります。通常、第一大臼歯(6番)、第二大臼歯(7番)のさらに奥に生えてきます。

なぜ「親知らず」と呼ばれるのかというと、多くの場合20歳前後といった成長した後に生えてくるためです。その頃には親が子どもの口の中を注意深く見なくなるため「親が知らない歯=親知らず」と言われています。英語では“wisdom tooth(知恵の歯)”と呼ばれています。


矯正治療で親知らずを抜くケース

矯正治療において、親知らずを抜くことが必要になる場合はいくつかあります。

  1. 歯の移動の邪魔になるとき
    日本人を含め現代人は顎が小さい傾向があり、親知らずがまっすぐ生えてくることは少なく、多くは埋伏(埋もれて生える)しています。横向きに埋まっていると手前の第二大臼歯を押して倒してしまうことがあり、その歯を起こして並べたいときに邪魔になります。また、後方へ歯を移動させる「遠心移動」が必要なときも、親知らずがあるとスペースを確保できないため抜歯が必要です。
  2. 第二大臼歯(7番)に悪影響を与えるとき
    横向きの親知らずが7番に強く当たると、7番の歯根が吸収されて神経が失われることがあります。また、その接触部分からむし歯や炎症が生じて強い痛みを起こすこともあります。そのため、手前の歯を守る目的で親知らずを抜くことがあります。
  3. 顎変形症の手術を予定しているとき
    下顎の骨切り手術を行う場合、親知らずがちょうど切開ライン上に存在することがあります。そのままでは手術に支障が出るため、事前に抜歯しておく必要があります。
  4. 親知らず自体が重度のむし歯のとき
    奥にあるため歯磨きが難しく、大きなむし歯になってしまう親知らずも少なくありません。将来痛みや炎症を引き起こすリスクが高いため、矯正治療のタイミングで抜いておくのが望ましいケースです。

親知らずを抜かないケース

一方で、親知らずを必ずしも抜かなくてよい場合もあります。

  1. 治療に活用できる場合
    例えば第二大臼歯(7番)を抜いて歯列を後方に移動させたいケースでは、その後ろにまっすぐ生えている親知らずを残して活用できます。この方が効率的に治療を進められることもあります。
  2. 将来の移植用として残す場合
    もし第一大臼歯(6番)が虫歯や根管治療などで弱っている場合、将来的に抜歯せざるを得ないことがあります。そのとき健康な親知らずを移植できれば、とても有効な治療手段となります。そのため、しっかり保存できる親知らずは残しておく価値があります。
  3. きちんと機能している場合
    親知らずがまっすぐ生え、上下の歯と正しく噛み合っているケースでは抜く必要はありません。噛み合わせの一部として十分に役割を果たしているからです。

まとめ

このように、親知らずは「必ず抜かなくてはいけない歯」ではありません。矯正治療における親知らずの扱いは、歯並びの状態や顎の大きさ、将来の歯の健康状態などを考慮して決める必要があります。

治療前にしっかり検査を行い、「この親知らずは抜くべきか」「残すべきか」を判断することが大切です。それによって治療後の安定性や将来的な口腔内の健康が大きく左右されます。

次回は「過剰歯」について、どんなときに抜歯が必要かを書きたいと思います。

関連記事