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2025/12/11

取り外し式との違いは?固定式矯正装置のメリット・デメリットをプロが解説

こんにちは。姫路はま矯正歯科院長の濱です。
今回は「小児の固定式矯正装置」について詳しく解説するブログになります。

前回の記事では、小児の取り外し式装置(床矯正装置など)のメリット・デメリットをご紹介しました。取り外しのできる装置は、使い方によって効果が左右されるという特徴がありました。

一方、今回取り上げるのは**取り外しができない“固定式装置”**です。固定式装置は、子どもの意思に関わらず常にお口の中にあるため、継続した力を与えられるという大きな利点があります。しかし、その反面で注意すべきポイントもいくつか存在します。

保護者の方からもご質問を多くいただく内容を盛り込んでいますので、ぜひお子さまの矯正治療の理解にお役立てください。


■ 小児の固定式矯正装置とは?

固定式装置とは、自分で取り外しができないタイプの矯正装置のことを指します。歯や歯列に一定の力を継続的に加えることで、計画的に歯を動かす治療に使用されます。

代表的なものは次の2種類です。

● 1. リンガルアーチ(Lingual Arch)

奥歯に金属のバンド(リング)を装着し、そこに溶接されたワイヤーが歯列の内側を通る装置です。

  • 奥歯を固定し、前歯のスペースを確保

  • 歯の移動量が必要な場合にも使用

  • 奥歯の位置を維持しながら前歯のデコボコを改善しやすい

● 2. 拡大装置(急速拡大装置)

特に上顎の狭さがあるお子さんに用いられ、中央でネジを回すことで上顎を左右に広げる装置です。

  • 上顎骨を適切な幅に拡大

  • 鼻腔や呼吸の改善につながる場合も

  • 急速拡大の場合は1か月ほどで顎が広がることも

ただし、拡大後すぐに外すと戻るリスクがあるため、一定期間の保定(半年程度が目安)が必要です。


■ 固定式装置のメリット

固定式装置には、取り外し式装置にはない大きなメリットがいくつかあります。

● 1. 本人の意思に左右されない

装置が常にお口の中にあるため、

  • 「今日は面倒だからつけない」

  • 「寝る前に忘れてしまった」

というようなことが起きません。
お子さまの意思では外せないため、治療効果が安定しやすいのが最大の利点です

● 2. 持続的な弱い力を加えられる

固定式装置は“ずっと一定の弱い力”をかけ続けることができます。

矯正治療では「間欠的な強い力」よりも「持続的な弱い力」のほうが生体に優しく、効率よく歯を動かせます。
そのため、治療計画に沿った歯の移動が行いやすいのです。

● 3. 個々の歯の細かいコントロールが可能

特にマルチブラケット装置(ワイヤー矯正)は、

  • 回転

  • 傾きの改善(トルク)

  • 歯の高さ調整(レベリング)

など、個々の歯の細かな制御ができます。

取り外し式の装置では、再装着時に同じ位置に戻らない・力の方向が一定でない、といった問題が起こりやすいですが、固定式ではその心配がありません。


■ 固定式装置のデメリット

メリットが多い一方で、固定式装置には注意すべき点もあります。

● 1. 虫歯になりやすい

装置がつくとどうしても食べかすが残りやすくなり、虫歯リスクが高まります。

特に小学生は学校や習い事で忙しく、

  • 昼食後の歯ブラシができない

  • 自分でしっかり磨けない

というケースが多いため、夜の仕上げ磨きは保護者の方が必ず行うことを強く推奨します

● 2. 装置が外れた時のトラブル

食事中の強い咬合や粘着質の食べ物が原因で、装置が外れてしまうことがあります。

  • 外れると痛みが出る

  • 敏感な部分が露出して不快感がある

  • 再装着のために来院が必要

など、日常生活の負担が増えることがあります。

● 3. 発音しづらい・飲み込みにくい期間がある

特に装置が上顎の内側にある場合、初期には

  • サ行・タ行などの発音がしにくい

  • 飲み込みづらい

  • 違和感が大きい

と訴えるお子さんもいます。

ただし、多くの場合は1か月ほどで慣れてきます。


■ 保護者の方からよくある質問(Q&A)

● Q1. どれくらいの期間つけますか?

装置の種類や治療目的によって変わります。

  • 急速拡大装置
     → 拡大自体は1か月ほど
     → その後“戻り防止”のために約半年の保定が必要

  • 全体的な歯並び改善
     → 少なくとも半年以上は装置装着が必要

長期間になるほど虫歯リスクも高まりますので、治療期間は必ず担当医と確認してください。


● Q2. 歯ブラシはどのくらい必要?

基本的には

  • 毎食後歯磨き

  • 昼が難しければ、せめてうがいだけでも徹底

そして何より重要なのは、夜寝る前の仕上げ磨きです。


● Q3. 治療中に虫歯になったら?

虫歯部分の処置が必要な場合は、

  1. 装置を一部外す

  2. 虫歯治療を行う

  3. 再装着する

という流れになります。

なお、再装着時の費用が追加になるかは医院によって異なるため、事前に確認されることをおすすめします。


■ 固定式装置を始める前に知っておきたいこと

固定式装置は、お子さんにとってもご家庭にとっても生活が少し変わるきっかけになります。
装置の違和感や歯磨きの負担、食事の工夫など「最初の1か月」は特に戸惑いやすい時期です。

そのため、

  • 当日は何をするか

  • どんな痛み・違和感が出る可能性があるか

  • 家で何に注意すべきか

こうした点を事前にしっかりご家庭で話し合っておくことが大切です。

お子さんが納得し、前向きに治療に参加できると矯正治療の効果はより高まります。


■ まとめ

固定式装置には
「本人の意思に左右されない」「継続的に力を加えられる」「細かい歯のコントロールができる」
という大きなメリットがあります。

しかし一方で、
「虫歯のリスク」「装置の脱離によるトラブル」「慣れるまでの発音の難しさ」
といった注意点もあります。

どの装置にも向き・不向きがありますので、担当矯正医が示す治療方針・説明をしっかり聞き、理解した上で治療を進めることが重要です。

次回のブログでは、また別の矯正治療や保護者の方がよく気にされるポイントについてお話ししていきたいと思います。どうぞお楽しみに。

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