2025/09/19
こんにちは。姫路はま矯正歯科、院長の濱です。
これまで「矯正治療で歯を抜くとき」というテーマで、親知らずの抜歯などを取り上げてきました。今回の第3回は、少し特殊なケースである「過剰歯(かじょうし)」の抜歯についてです。
目次
本来、永久歯は親知らずを含めて 32本 生えそろうのが標準です。しかし、まれにそれ以上の余分な歯が生えてきたり、骨の中に埋まったまま存在していたりすることがあります。これが「過剰歯」です。
過剰歯は決して珍しい存在ではなく、歯科検診や矯正の相談で撮影したレントゲンをきっかけに見つかることも多いです。
発生部位には特徴があり、最も多いのは 上顎前歯部の歯根付近。そのほか、小臼歯の近く、大臼歯の周囲などでも発見されることがあります。
症状がまったく出ないまま一生を過ごす方もいますが、矯正治療や口腔内の健康に影響を与える場合には抜歯を検討しなければなりません。
過剰歯の周囲に炎症や膿の袋(嚢胞)ができると、周囲の骨を溶かしたり、隣の歯の根を吸収することがあります。放置すると治療が難しくなるため、早めの抜歯が推奨されます。
矯正で歯を動かす経路上に過剰歯が存在すると、歯の移動が阻害されるだけでなく、移動する歯の根が吸収されてしまう危険性もあります。この場合、矯正開始前に抜歯を行うことが大切です。
大臼歯の周囲に過剰歯があると、ブラケットやバンドを正しい位置に装着できません。装置を使う前に抜歯を行うことで、スムーズに矯正治療を進められます。
本来は生えてくるはずの永久歯が、過剰歯によってブロックされていることがあります。埋伏歯を牽引して出してくる治療をする際には、まず過剰歯を抜歯しないと計画通りに進みません。
一方で、過剰歯が存在しても無理に抜かない方がよい場合もあります。
過剰歯が他の歯から十分に離れていて、矯正治療の進行にも影響がない場合は、抜歯の必要はありません。
通常の歯と逆向きに深く埋まっている過剰歯は、抜歯に大きなリスクを伴います。病変もなく矯正にも支障がない場合は、そのまま経過観察するのが一般的です。
上顎洞や下顎の神経・血管に近い位置にある過剰歯は、抜歯による合併症(神経麻痺や大量出血など)のリスクが高まります。この場合も、安易に抜歯せず慎重に判断することが求められます。
過剰歯を抜くべきかどうかを判断するうえで、正確な画像診断 が不可欠です。
パノラマレントゲン:全体像を確認するのに有効。
セファログラム:矯正治療の計画立案に用いられる。
CT撮影:過剰歯の方向(純性か逆性か)、隣の歯の根との関係、神経や血管との距離などを三次元的に把握できる。
特にCTは、抜歯の必要性や手術リスクを見極めるうえで必須といえる検査です。
過剰歯の抜歯は単純に「あるから抜く」というものではありません。
まず矯正治療全体の計画を立てる。
そのうえで過剰歯が治療にどう関わるかを評価する。
病変リスクや手術リスクも考慮して、専門医が抜歯の可否を判断する。
この流れを経て、必要に応じて抜歯を行うのが基本です。
例えば、前歯の矯正を希望された患者さんで、レントゲンを撮ったところ上顎に小さな過剰歯が確認されたケースがありました。幸い、隣の歯の移動を妨げる位置にはなかったため、抜歯は行わずに経過観察としました。
一方で別の患者さんでは、過剰歯が埋伏している永久歯の萌出を妨げていたため、抜歯と牽引治療を組み合わせることで、最終的にきれいな歯並びを獲得することができました。
このように、過剰歯の扱いは一人ひとりで大きく異なります。
過剰歯は「余分な歯」ですが、その存在が問題を引き起こすかどうかはケースバイケースです。
病変や矯正治療の妨げになる場合 → 抜歯が必要
リスクが大きい場合や影響が少ない場合 → 経過観察
大切なのは、正確な画像診断と専門医による判断です。安易に抜くのも危険ですし、放置しすぎるのも問題になることがあります。
次回は「小臼歯の抜歯」について解説します。矯正治療の現場では頻度が高く、治療計画に大きく関わるテーマですので、ぜひご覧ください。
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