皆さんこんにちは。姫路はま矯正歯科院長の濱です。
これまで数回にわたり、各矯正治療の特徴やメリット・デメリットについてお話ししてきました。今回のテーマは「部分矯正（マイナートゥースムーブメント・MTM）」です。全体矯正（本格矯正）とは異なり、歯列の一部分のみを対象として歯を動かす治療方法ですが、メリットもあれば適応が限られるケースもあります。

本記事では、部分矯正のメリット・デメリット、向いているケース、治療時の注意点などをまとめてお伝えします。

■ 部分矯正とは？全体矯正との違い

まず、「部分矯正」と「全体矯正」の違いを明確にしておきましょう。

全体矯正（本格矯正）
上下左右すべての歯に装置をつけ、全体の噛み合わせや歯並びを根本から整える治療。

部分矯正（マイナートゥースムーブメント｜MTM）
特定の歯のみを対象に装置をつけ、限定的な範囲の歯の移動を行う治療。

「前歯の少しのガタガタだけを治したい」「被せ物を作りやすくするために数本だけ動かしたい」など、明確で限定的な目的の場合に適しています。

■ 部分矯正のメリット

① 費用が安く済みやすい

装置をつける範囲が狭いため、一般的には全体矯正より費用が抑えられます。
例えば、全歯列の6分の1の歯だけを動かす場合、費用も概ねその程度に収まることがあります。ただし、料金設定は医院ごとに異なるため、事前の確認が必要です。

② 治療期間が短い

動かす範囲が限定的なため、全体矯正と比べると治療期間は短くなる傾向があります。
目的が達成できれば速やかに装置を外すため、数ヶ月で完了するケースもあります。

③ 装置が少ないため違和感・トラブルが少ない

装置をつける歯が少なく、小口腔内の異物感が軽減されます。
また、ブラケットが外れるなどのトラブルも少なく、緊急来院が減る傾向があります。

④ 補綴（被せ物）前処置として非常に優秀

部分矯正は一般歯科治療の前処置として効果的です。

• 歯根が埋もれていて被せ物が作りにくい場合に歯の位置を整える

• 虫歯治療のためのスペースを確保しやすくする

• 前歯・奥歯どちらの補綴処置でも活用できる

特に旧歯部の治療では短期間で大きな効果を発揮します。

■ 部分矯正のデメリット

① 並べられる範囲が限定的

部分的にしか装置をつけないため、動かせる歯の範囲も限定的です。
全体的な噛み合わせ改善などはできません。

② 適応症例が狭い

以下のようなケースでは適応外になることがあります。

• ガタガタが強い

• 前後差が大きい（出っ歯・受け口）

• 開口で前歯が噛んでいない

• 抜歯が必要なレベルの乱れ

部分矯正はあくまで「限定的な治療」だという点が制約になります。

③ 基本的に抜歯は行わない

部分矯正は非抜歯が前提となることが多く、スペースが不足しやすいです。
そのため、

• 歯が前方に傾斜して口元が出る

• 無理に並べて後ろ側に隙間が残る

• 削ってスペースを作る必要がある

などの問題が起きる場合があります。
余ったスペースはコンポジットレジンで埋める処置が必要になることもあります。

④ 後戻りのリスクが高い

部分矯正は全体矯正に比べて後戻りが起こりやすい傾向にあります。

• リテーナー（後戻り防止装置）が必要

• 固定式フィックスリテーナーを半永久的に使う場合がある

• その際の料金体系を事前に確認する必要がある

特に前歯の軽度な整列では後戻りが起きやすいため注意が必要です。

⑤ 計画通り治らない場合、全体矯正へ移行する可能性

部分矯正で思ったような結果が得られない場合、全体矯正に移行することがあります。
このとき、

• 最初から全体矯正の料金が再度かかる

• または差額のみで移行ができる

など、医院によって料金体系が異なります。
事前に必ず確認しておきましょう。

■ よくある質問（Q&A）

Q1. 部分矯正の料金はどれくらい？

全体矯正より安いことが多いですが、医院ごとに異なります。
事前に見積もりを聞くのがおすすめです。

Q2. 部分矯正に向いている装置は？

目的によって使い分けます。

• 補綴前処置（特に奥歯）：マルチブラケット装置が有利

• 前歯の軽度のガタガタ：マウスピース矯正が向いていることも

• 軽度の出っ歯や後戻り：舌側矯正の部分矯正という選択肢も

医院によって扱う装置が異なるため、複数院でカウンセリングするのも良い方法です。

Q3. 途中で治らなかったらどうする？

全体矯正への移行が必要になる場合があります。
その際の費用負担や治療方針は医院ごとに違うため、事前確認が必須です。

■ まとめ：部分矯正は「正しく使えば非常に良い治療」

部分矯正は非常に優れた治療方法ですが、適応症例が限られるという特色があります。
「少しだけ気になる部分を整えたい」「補綴処置をスムーズにしたい」など、目的が明確な場合には大きなメリットがあります。

しかし、適応外のケースなのに無理に部分矯正を行うと、

• 治りきらない

• 噛み合わせの不調が残る

• 後戻りが大きくなる

• 結局全体矯正が必要になる

といったトラブルが起こる可能性があります。

そのため、部分矯正を検討する際は、

• 医院の治療方針

• 設定料金

• 取り扱い装置

• 全体矯正への移行条件

などをしっかり確認することが大切です。

次回も、他の矯正治療のメリット・デメリットについてわかりやすく解説していきます。どうぞお楽しみに。