こんにちは。姫路はま矯正歯科院長の濱です。
前回、前々回に引き続き、各種矯正治療の特徴とメリット・デメリットについてお話ししたいと思います。今回は、近年非常に人気の高い「マウスピース型矯正装置」について、その特徴や良い点・注意点を詳しく解説します。

マウスピース型矯正装置とは

マウスピース型矯正装置とは、透明なプラスチック製のマウスピースを歯に装着して少しずつ歯を動かしていく矯正方法です。装置を段階的に交換していくことで、理想的な歯並びに近づけていきます。見た目が自然で痛みが少なく、近年では多くの方に選ばれる治療法になっています。

マウスピース型矯正装置のメリット

1. 取り外しができるため、虫歯になりにくい

一番の特徴は「着脱可能」という点です。固定式のブラケット矯正では歯の表面に金属や樹脂の装置が付くため、歯ブラシが届きにくい部分が生まれ、虫歯や歯肉炎のリスクが高くなります。
一方でマウスピース矯正は、食事や歯みがきの際に取り外せるため、普段どおりのセルフケアが可能です。清掃性が高く、口腔内を清潔に保てる点は大きな利点です。

2. 装置の脱離やトラブルが少ない

ブラケット矯正では、硬い食べ物を噛んだ際に装置が外れる「脱離」トラブルが起こることがあります。外れるたびに再来院が必要になり、患者さんの負担にもなります。
マウスピース型は歯に接着する装置がほとんどなく、必要最小限のアタッチメントを付けるだけなので、脱離トラブルが非常に少ない点もメリットです。装置が唇や頬に当たって痛むといったことも少なく、快適に過ごせます。

3. 食事制限がない

マウスピースを外して食事ができるため、ブラケット矯正でよくある「食べてはいけないもの」がほとんどありません。キャラメルやガム、硬い食べ物なども自由に楽しめます。
「矯正中も食事を楽しみたい」という方には嬉しいポイントですね。

4. 発音や違和感が少ない

金属のブラケットが付いていると、舌の動きや唇の感触に違和感を覚えることがあります。マウスピース矯正は薄くて滑らかな素材のため、口の中の異物感が少なく、比較的発音もしやすいです。仕事で人と話す機会が多い方にも向いています。

5. 目立たず自然な見た目

透明なマウスピースは装着していても目立ちにくく、写真撮影や会話の際にも気づかれにくいのが特徴です。
「矯正していることを知られたくない」「人前に立つ仕事をしている」という方にとって、審美性の高さは大きなメリットです。

マウスピース型矯正装置のデメリット・注意点

1. 自分の意思に大きく左右される

取り外しができるということは、裏を返せば「外してしまえる」ということでもあります。
マウスピース型矯正は、1日20時間以上の装着が原則です。装着時間が短いと、歯が計画通りに動かず、治療期間が延びたり、結果が出なかったりします。
つまり、患者さん自身の自己管理能力・継続力が治療の成否を左右するという点が、最大のデメリットとも言えます。

2. 苦手な歯の動きがある

マウスピース型矯正では、歯を「押す」「引き出す」といった複雑な動きが苦手です。特に「歯を垂直方向に動かす」「抜歯後の大きなスペースをきれいに閉じる」といった動きは難易度が高くなります。
そのため、症例によってはマウスピース単独での治療が難しいケースも存在します。経験豊富な矯正専門医が症例を正確に診断し、適応を見極めることが重要です。

3. 噛み合わせの調整が難しい

マウスピースを装着している間は、上下の歯の間にマウスピースの厚みがあるため、咬み合わせの調整が難しくなることがあります。
特に、奥歯の咬合が浅くなったり、前歯が強く当たるなど、理想的な咬合を再現するには工夫が必要です。ゴム（顎間ゴム）などの補助装置を併用することで改善できますが、やはりブラケット矯正より難易度は上がります。

4. 治療に時間がかかる

ブラケット矯正と比較すると、歯の移動スピードはゆっくりです。
また、装着時間が不足するとさらに動きが遅くなるため、治療期間が長引く傾向があります。真面目に装着を続けられる方であれば問題ありませんが、装着を怠ると年単位で治療が延びることもあります。

5. 医師の診断力と治療経験が重要

マウスピース矯正は、どんな症例にも万能というわけではありません。
適応症例の見極め、治療途中のリカバリー、追加アライナーの判断など、すべてに高い診断力が求められます。
経験豊富な矯正専門医のもとで治療を受けることが、安心・安全な結果につながります。

よくある質問（Q&A）

Q1. 途中でマウスピースが合わなくなったら？

歯の動きにズレが生じてマウスピースが合わなくなった場合、再スキャンを行い「リファインメント（追加アライナー）」で再設計する必要があります。
この際、追加料金がかかるのか、何回まで再製作できるのかを事前に確認しておきましょう。

Q2. マウスピースを使えなくなったらどうすれば？

仕事や生活環境の変化で装着が続けられなくなった場合、途中からブラケット矯正へ切り替えることも可能です。
ただし、追加費用や治療方針の変更が発生する場合があるため、最初の契約時に「続けられなくなった場合の対応」をしっかり確認しておくことが大切です。

Q3. 引っ越ししたら治療はどうなる？

マウスピース矯正は、基本的に1〜2か月ごとの通院が必要です。
遠方に引っ越す場合は、治療データやスキャン情報を転院先に引き継ぐことができます。
ただし、転院時の費用清算やデータ移行の対応は医院ごとに異なるため、事前にルールを確認しておくと安心です。

まとめ

マウスピース型矯正装置は、

• 目立たず清潔に保てる

• 食事制限がなく快適

• 痛みが少ない
  といった多くのメリットがあります。

一方で、

• 装着時間の自己管理が必要

• 苦手な歯の動きがある

• 診断力のある医師が必要
  といった点も理解しておくことが重要です。

マウスピース型矯正は「誰でも同じようにできる治療」ではなく、症例に適した診断と丁寧なフォローアップがあってこそ効果を発揮する治療法です。
ご自身のライフスタイルや歯並びの状態に合わせて、信頼できる矯正専門医とじっくり相談しながら、最適な治療方法を選びましょう。